犬の再発性上皮びらんの1例

2015年12月9日

再発性上皮びらんは表層性角膜潰瘍分類され、ボクサー潰瘍、あるいはSCCEDsなどいろいろな呼び名がある疾患です。

柴犬、コーギー、G.レトリバー、チワワなどに多い傾向がありますが、中年以降のどの犬種にも罹患する可能性があります。

症状は主に、角膜上皮(最上層)の剥離に伴う、眼瞼痙攣、流涙、眼の充血がみられ、適切な治療が行われない場合、長期間に及ぶ事があります。

治療は主に、角膜上皮のデブライドメント、点眼療法が主に行われています。

今回の症例は、12歳、避妊雌のパピヨンで、眼を痛がるという主訴で来院しました。

初診時、角膜上皮のデブライドメントをダイヤモンドバーにておこない(動画)、抗生剤、ヒアルロン酸点眼、抗生剤内服、ソフトコンタクトのバンテージを行いました。

 

約2週間の治療では、上皮の改善はみられず、点眼薬の変更を行ったところ著しい改善を認めました。

今回の症例は、非常に穏やかな性格のわんちゃんだったため、局所麻酔のみで処置を行う事ができました。何となく、眼がしょぼついてなんて症状があれば早めに検査を行ってみましょう。

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角膜血腫様血管新生の犬の一例

2015年11月12日

 犬の血腫様の血管新生はしばしば老齢の犬にみられる疾患で、はっきりとした病変の割には、臨床症状に乏しく、飼い主さんも症状に気づいていないことも珍しくないと思われます。

2011年に行った我々のリサーチでは、10歳以上の雄の老犬にやや発生が多くみられました。現在のところ、まだはっきりとした原因は解明されてはいませんが、涙液の異常や、角膜上皮障害などの関与が疑われています。

 今回の症例は、血腫様角膜血管新生がみられた、10歳、雄のポメラニアンです。眼が出血していると来院されました。症例犬は強い痛みなどは呈していなく、涙液量などの一般眼科検査では明らかな異常はみられませんでした。治療は抗生剤の点眼を約1週間行いましたが、反応はみられず、再診時にステロイド点眼薬の処方をしたところ、著効を示しました。

 血腫様角膜血管新生の治療は、一般的に消炎剤などの治療が行われているようですが、この原因の解明がなされていないため、治療薬の評価などさらなる研究が待たれるところです。

ひょっとしたら、貴方のわんちゃんにも同じような症状が現れているかもしれません。

よーく観察してみて下さい。

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犬の汎ぶどう膜炎の1例

2015年10月22日

ぶどう膜炎は前ぶどう膜炎、後ぶどう膜炎、汎ぶどう膜炎に分類され、炎症が起きている場所によって、様々な症状を呈する疾患です。

今回の症例は、汎ぶどう膜(ぶどう膜全体)と診断した、網膜剥離を繰り返す犬、7才、雄(未去勢)の症例です。広範囲な網膜剥離のため、視覚を消失していますが、治療により網膜剥離の改善がえられ、現在も良好に維持できています。原因としては、免疫介在性が最も考えられるため、生涯にわたる治療が必要と思われます。

経過途中に網膜剥離の再発がみられたが、増量する事により改善が得られた。

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広範囲な犬の細菌性角膜潰瘍の1例

2015年8月31日 犬やネコでは、急速な角膜の融解によって角膜穿孔がおきた結果、視覚温存ばかりでなく、眼球そのものを残すことができなくなる事があります。角膜の融解には、様々な原因によって角膜上皮の崩壊が最初におきた結果、コラゲナーゼやMMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)が産生され活性化し、激しい角膜実質の融解が起きるとされています。内科的には、抗コラゲナーゼ薬とされる自己血清点眼、テトラサイクリン系薬の投与などが行われます。しかし、融解に向かっている病態を止めるのは容易ではなく、外科的な対応が迫られることもしばしばあります。それらの方法には、角膜移植、結膜移植、各種バンテージを用いて角膜の修復を行います。当院では、広範囲な場合、結膜フラップが主に用いている手技です。 症例は、12歳雌のシーズーの左眼です。眼の不快感、角膜中央部の白濁のため来院しました。角膜擦過標本では、多数の細菌、角膜上皮がみられました。そのため、抗生剤の全身投与、頻回点眼、自己血清点眼を行いました。しかし翌日、角膜実質の広範囲な融解がみられ、いつ穿孔してもおかしくない状況になりました。そのため、結膜組織を用いて角膜実質の再構築促進の目的で、帯状結膜フラップを行いました。幸い、移植後は良好に経過し、眼球組織の温存は可能であった症例です。 角膜潰瘍1 初診時所見 角膜潰瘍2 細菌と角膜上皮がみられる 角膜潰瘍3 広範囲な角膜融解像 角膜潰瘍4 結膜被覆術及び眼瞼縫合を行った。 カテゴリ:眼科診療 | タグ:

犬の特発性ぶどう膜炎の1例

2015年7月28日 ぶどう膜とは虹彩、毛様体、脈絡膜から構成される組織の事で、眼の中で血管が豊富な組織とされています。その血管は特別な構造を持ち、眼球と特有の免疫システムにより、炎症をコントロールしています。様々な原因でぶどう膜の炎症がおきた結果、縮瞳、眼房水の濁り(フレアー)、低眼圧、眼内出血、などたくさんの症状がみられます。眼検査を行い、ぶどう膜炎が存在すると診断する事はそれほど難しいものではありませんが、問題は原因を確定するのが容易ではないことです。犬のぶどう膜炎の最も多い原因は、特発性つまりよくわからないケースで、約6割とされています。今回の症例も様々な検査を行った結果、原因を特定する事ができなく、特発性前ぶどう膜炎と診断した症例です。幸い、消炎剤の全身、局所投与により回復した症例でしたが、全身的な疾患に付随してぶどう膜の炎症が現れる事があるため、ただ眼の病気としてとらえられないのがこの疾患の診断の難しさではあります。 ぶどう膜炎1 写真1著しい縮瞳を認め、隅角の閉塞による高眼圧を呈していた ぶどう膜炎5 写真2眼内房水フレアーの存在 ぶどう膜炎6 写真3眼底検査、血液および血清学的な検査では異常はみられなかった。 カテゴリ:眼科診療 | タグ: